トップ » 特集一覧 » 地雷と闘う 希望がもてる大地にするために、魂を宿したモノづくりに挑む
|
|
地雷により20分に一人の割合で、命が失われている。その被害者の78%は貧しい農業従事者たち。地主以外の貧しい小作人たちは、地雷源にしか住める場所がないからだ。 しかも1日に亡くなる被害者の約40%は、貧しい子どもたちが占める。地雷源の標識が読めず、玩具と間違えてしまうため、事故にあいやすく、医療施設も近くにないため、身体の小さい子どもたちは亡くなってしまうのだ。 また、地雷を踏んでしまった子どもたちは、その後も何度も手術を繰り返さなければならない。成長にともない骨が伸びるため、手術をしないと自らの骨が皮膚を突き破ってしまうからだ。モルヒネなどの麻酔薬も十分になく、ただひたすら痛みを堪えながら、ゴリゴリと骨を削るしかない。そんな厳しい現実がある。 破壊しない限り、半永久的に存在し続ける地雷。その地雷の中でも、致命的な殺傷力を持たない対人地雷は、特におぞましき兵器。人間に苦痛を与えることだけを目的に開発された兵器だからだ。人々の手足を奪い、「生かさず殺さず」死なない程度に傷つけることで、生きる気力を失わせる。 被害を受けた子ども1人が生きていくためには、大人4人の援助が必要とされ、国力そのものを疲弊させる。しかも簡易のものなら1個わずか300円程度で製造ができてしまう。まさに「悪魔の兵器」といわれる所以(ゆえん)だ。 この地雷の除去活動に挑む、日本人エンジニアがいる。「ニカラグアでの地雷の爆発で、もう方耳は聞こえないんです。でもね、地雷除去をした土地に、実った作物を見て、子どもたち、農民たちが喜んでいる声が今も聞こえているんですよ」。そう話すのが 山梨日立建機社長 雨宮 清 先生だ。 「モノづくりをする日本の技術屋は、魂を宿したモノづくり、人づくりをしなくちゃいけねぇ」と語る雨宮先生のモノづくり、人づくりへの熱い想いを、ご紹介します。 |
|
主 催:山城経営研究所 共 催:文京学院大学・短期大学 生涯学習センター 日 時:2009年10月07日(水)18:30〜20:30 講座名:2009年秋冬期実践経営大学講座 地雷除去に挑む 豊かで平和な大地への復興 |
|---|
| 【講師プロフィール】 |
![]() |
氏名:雨宮 清(あめみや きよし) 肩書:山梨日立建機株式会社 代表取締役社長 山梨県出身。70年に現在の山梨日立建機となる建設機械会社を設立。商用で訪れたカンボジアで地雷被害者の悲惨な姿に遭遇したのをきっかけに95年より地 雷除去機の開発に着手。 現在も世界各地で地雷除去に対する積極的な取り組みを行なう中、全国で地雷被害の現状を訴えている。 |
|
|
|
「子どもたちに笑顔を、人々が希望をもてる大地にするために、その手助けを私はしたいんです」そう雨宮先生は切り出しました。 1994年、私は内戦終了後のカンボジアに商用で訪れました。戦後復興をめざすカンボジアにビジネス・チャンスがあると考えたためです。 ところが、カンボジアで目にしたのは、地雷によって手足を失った子ども、老人、女性など・・・ケガを負った多くの人々の姿に、私は驚きました。正直、とてもビジネスなんてできる状況じゃない、そう思いました。 日本に帰ろうとするそんな私に、その後の私の人生を大きく変える、ある老婆と少女との出会いがありました。 「あんた日本人でしょ? このカンボジアの人々を助けてください」 通訳を通じ、この言葉を聞いた時、亡くなった母が、いつも話してくれていた言葉を思い出しました。 「大きくなったら、陰日向のない人間になれ。人のためになれ。迷惑をかけるな。」 この母の言葉が「オレは技術屋なんだ、オレにも何かできるはずだ!」と、地雷と関わってゆくきっかけとなり、私を突き動かしていきました。 |
|
|
|
現在、120ヶ国に1億個以上の地雷が埋められています。その大半は、中南米・アフリカ・中近東・東南アジアなど、地下資源の豊富な地域に集中しています。しかも恐ろしいことに、次々と新たな地雷も埋められているのです。 これだけの地雷を人の手により除去しようとすると、約1000年の月日がかかると言われています。しかも、その除去作業は困難を極めます。 地雷は、わずかな衝撃を与えるだけで爆発する危険性があります。その1つの地雷を除去するだけでも約2時間はかかります。さらに、そうした地雷埋設地域は、ジャングル地帯や荒廃した場所が多く、蚊や毒蛇も棲息し、マラリアやデング熱にかかる危険性も高く、作業員が命を落とすことが後をたたないのです。 また、地雷の多くは、紛争地帯であった地域に埋設されているため、地雷だけでなくクラスター爆弾など、数多くの不発弾も残されています。このため、容易に近づくことすらできない。そんな厳しい環境下が故に、いち早い機械化が求められていたのです。 |
|
|
|
カンボジアから帰国した翌年の1995年、「オレにも何かできるはずだ!」と思いながら、 「一人の人間ができることは、所詮、限られている・・・」 そう自問する日々を過ごしていました。 ある日のこと、とある和尚さんに胸のうちを話すと・・・ 「一人の人間が数千、数万の人間を救えるのなら、安い命やないか?」 ・・・と言われ、そうだ!そのとおりだ、と思いました。 「和尚、オレの戒名をつけてくれ! そして、オレ、お墓を買って帰りたい!」と、早速お墓を買って帰りました。 すると、「あなた、何を考えているの!」と妻から叱られました。でも、妻と二人で始めた会社です。 「オレは、命を捨てることになるかもしれない。でも、このプロジェクトにオレの命をかけてみたい」と話しをすると、以後、何も言わず、開発費も惜しまず、お金を出してくれました。 休みの日も殆ど家にいないで、あちこち飛び回っているのに・・・妻には本当に感謝しています。 1996年、私は社内に対人地雷除去機の開発プロジェクトを設置しました。会社にとっては大きな経営リスクでした。でも、「世界の地雷と戦わせてほしい」と訴えると、社員とその家族は応えてくれました。 この地雷除去機の開発は、悪戦苦闘と試行錯誤の連続でした。1000℃におよぶ爆発温度や衝撃に対する耐久性、石や岩盤に対する耐磨耗性、切削性・・・検証項目だけでも多岐にわたります。関係各所に働きかけながら、陸上自衛隊 下北試験場での実証試験やアフガニスタン・カンボジアで実地検証など、度重なる試作と検証を繰り返しました。 そして、約5年の歳月を経て、油圧ショベルの先端に高速回転カッターを付けた一号機「ロータリーカッター式対人地雷除去機」が完成しました。こうして、現在、世界6ヶ国68台の地雷除去機を納入することができました。 最新式の地雷除去機では、さらに改良を加え、ただ地雷除去をするだけでなく、除去と同時に畑を耕すこともできるようにし、農地復興やインフラ整備の重機として使用できるようになりました。 |
|
今では、社員たちが、この「地雷除去」という仕事を誇りにしてくれていることを、私は誇りに思っています。世界一素晴らしい社員たちです。だから、たとえ納期が一ヶ月と言われても、社員たちは、夜中でも朝でも仕事をやってくれています。 「地雷撤去を待っているユーザに迷惑をかけるな」、「20分で亡くなる命を少しでも減らしたい」。こういう言葉が、社員の口から自然に出てくるようになりました。 いま社員を班に分け、小集団活動をやりながらモチベーションを高める活動をしています。私が大切にしている言葉に「1つの心は万人の心、万人の心は1つの心」という早稲田大学の前身 東京専門学校で教鞭を振るわれた前田日明(あきら)先生の言葉があります。 この言葉を私は大切にしています。 |
|
|
|
|
モノづくりをする上で一番大事なことは、ユーザが何をのぞんでいるか、同じ目線に立って、それを知ることだと思います。除去活動を始めるに当り、現地で一年の三分の一も同じ時を過ごし、現地の人々と同じ飯を食べ、はじめて彼らの希望するものが何かわかりました。 私は、15歳で山梨から東京に出て修行をしました。だから、ずっと技術屋なんです。技術屋は、モノづくりの挑戦者でありたい。 私には「完成」という言葉はありません。たえずたえず考え、お客様が何を求めているのか、ということを考えてきました。私のビジネスもそう、地雷除去機の開発も同じです。 技術屋の根源は、モノづくり、人づくりにあると思います。 「人をつくらずして人はつくれない、人をつくらずしてモノはつくれない」と思います。 私は、日本のモノづくりに誇りを持っています。私が修行していた頃のような、かつての時代は過ぎ去ろうとしていますが、ヘッジファンドなどのように、ただ利益だけの追求に走るのではなく、ネジ一つさえ大切に扱う、モノを扱う大切さを今一度教え、伝えていかなければ、日本の技術はダメになってしまう、そう思っています。 だからこそ、働く人々を粗末にしてはいけないのです。 |
|
|
|
日本は、ODAで病院建設などの支援をしています。いわゆる"箱物ODA"というやり方です。でも、そこで患者の手術を行なっている現場の医師たちは、その殆どが中国の方でした。 日本の誇るモノとカネ。そうした支援も、すばらしいとは思います。しかし、日本は心無い国だなぁとも思います。なぜ、こういう支援をするのかなと。こんな国では、これから世界から弾かれるのでないでしょうか。 現在の日本は、モノとカネだけでは、もう世界で勝つことはできません。これからは、中国人の医師たちのように、日本人も自ら手を差し伸べていかないといけない、と私は思うのです。 そうした中国の世界での動きは、企業の経済活動においても表れています。アフリカ地域におけるレアメタルなどは、いまやその70%近くが中国系企業に抑えられてしまいました。 我々は、100年に一度と呼ばれる不景気に直面しています。しかし、この機会を逆にチャンスと捉え、今までどおりではなく、知恵を出し合い、目を大きく開き、エコ産業しかり、いろんな産業すべてが、なにかグローバルにやっていかなくてはならないと思います。 |
|
|
|
ある時、東京大学のとある先生から請われ「雨宮さん、今度、ロンドンで開かれる『人間の安全保障とビジネス』というテーマのシンポジウムに出てほしい」と言われました。エール大学、オックスフォード大学、北京大学など、世界に名だたる大学が集まるシンポジウムです。 私は、そんな所で、とても話しなんてできないと、はじめは断りました。でも、「どうしても行ってくれ!」と言われ、この話しを受けました。 それから、JICAに行ったり、外務省に出かけたり・・・シンポジウムまで悶々とした時を過ごしていました。すると、「雨宮さん、雨宮流にやったらいいじゃないですか」と多くの方々から励まされ、背中を押していただき、私は、私流に講演を行ないました。 「そこに住む人々が安心して暮らせるってことが大事なんです。そこに平和を蘇らせるということが大事なのです。・・・(中省略)・・・つまり、安心して暮らせる大地をつくることが、人間の安全保障であり、豊かな大地となったら、そこから新たなビジネスも生まれてくるのです」と。 私は、こうした講演活動を通じ、去年、子どもたちから9864通にもなる手紙を受け取りました。 そこには、子どもたちの「夢」「希望」「未来」いろんなことが書かれています。子どもたちには、夢や希望がたくさんあるのです。 それをいま私たち大人や社会が、夢を描けないような、違う方向へ違う方向へ動かしているような、そんな感じがしています。 そして、いま子どもたちは「命の大切さ」ということを忘れているような気がしています。子が親を殺し、親が子を殺す時代です。しかも毎日95名を超える人々が自殺をし、年間3万人もの命が失われているのです。世界で、こんな国があるでしょうか。ないでしょう。 地雷を踏んで命が失われているのではないんです、「心」で命が失われているのです! みな我々の責任なんです。家族が捨て、企業が捨て、社会が捨てたら、彼らは行き場がないでしょ?だからこそ、我々が救わなければいけないのです。 企業の経営者は、学校に出向いて、夢や希望を子どもたちに伝えることを、まず自らやってみてほしい。そうしなければ、いけないんです。 |
|
いま日本では、儲からないからといって、契約社員や派遣社員の首切が行なわれています。お叱りを受けるかもしれませんが、そんなに儲からなくてもいいじゃないですか。 株主のためだけでなく、そこで働く人々やその家族があってこそ企業です。そこに働く人々がいるからこそ、企業は成り立っていると私は信じています。私が話していることは間違っていると言われるかもしれません。 でも、人を大切にしない企業は、生き残れないと私は思います。 思いやりの心を持つことにより、豊かな心を持てるようになる。そうした日本の企業から、世界のトップに立てるような企業が生まれてくる、と私は信じています。 |
|
(取材後記) 今回、実際に地雷の除去活動されている雨宮先生のお話をお聞きし、胸が熱くなる想いがしました。講演が終わり、同じような命をかけた行動を果たして自分もできるだろうか、そう自問し考えていました。 高い志をもったリーダーの下、偉業に挑む。誰しも一度は、そうしたことに取り組んでみたいという想いにかられたこともあるのではないでしょうか。しかし、そう思う一方で、家族のこと、まだ幼い子どものこと、もし万が一の事があった場合に残された者のこと・・・色々なことを考えると、一長一短には答えが出せない躊躇を感じました。 また、地雷源に住み暮らさなければならない立場だったら? 日本が、もし戦時下の国だったら? 選択も許されない立場や状況に置き換えて考えてみても、答えはでませんでした。皆さんは、いかがお考えでしょうか。 まったく同じようなことはできないかもしれない。でも、社会貢献もビジネスも、ユーザたる人々が望んでいることに目を向けることだと考えれば、それはビジネスにおける顧客視点という捉え方と、あまり隔たりはないように思います。 自分たちができることを自分たちなりに行なう。それには何をするべきか、社会貢献のあり方について、とても考えさせられた講演でした。 |
|
●ご意見ご感想がございましたら こちら からお送り下さい。 ●安全保障やビジネスなど「社会時事」についての講座は以下から調べることができます。 【カテゴリから探す】 「現代社会・ビジネス・お金」>「社会時事・金融・産業・交通など」 「現代社会・ビジネス・お金」>「法律・政治・行政」 「現代社会・ビジネス・お金」>「ビジネス全般・輸入など」 「歴史・地理・哲学・宗教」>「世界の地理・文化・風俗」 ぜひ、ご利用下さい。 |